酒田市民会館 希望ホール KIBOU HALL

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活動レポート

高橋多佳子ピアノ・リサイタル庄内公演in鶴岡

荘銀タクト鶴岡 大ホール

1月14日のアナリーゼワークショップ、15日の酒田公演、そして16日の鶴岡公演と、3日間に渡って庄内に素晴らしい音楽を届けてくださった高橋さん。今回は、最終日の1月16日に荘銀タクト鶴岡で行われた「高橋多佳子ピアノ・リサイタル庄内公演in鶴岡~オール・ショパン・プログラム~」の様子をレポートします。

黒いドレスに身を包んで登場した高橋さん。

1曲目は『2つのノクターン 作品15』です。煌めくような音色に会場は一気に惹きこまれます。

曲が終わり挨拶をした後は

「昨年の夏にこちらに初めて伺って、タクトしんぶんという新聞のインタビューを受けました。その時になんて素敵なホールなのだろうと思い、今日ここで弾けるのを本当に楽しみにしてまいりました」

と笑顔を見せる高橋さん。

ショパンの音楽について、

「美しさの裏にものすごく熱いものや強いものを秘めていて、そういったものが私たちの心に強く届くのだと思っています。これ以上無いくらいの繊細な音が表され、和音の変化一つでも涙がぽろっと出てしまうくらい、本当に様々な感情をピアノという楽器で表現した人だと思います」

と話しました。

続いてはワルツ第1番です。この曲はショパンが22~23歳で作曲したと言われています。フランスに出た直後のショパンは演奏会で大成功を収めますが、それだけで音楽家としての生活が成り立つわけではなく、苦しい日々が続きました。

そんな中、ポーランドから亡命していた貴族に助けられ、上流階級のサロンでの演奏や貴族にピアノを教えることで生計を立てるようになりました。その頃に書かれたこのワルツ第1番がヒット曲となり、楽譜が出版されると飛ぶように売れ、ショパンという名前もフランスに定着し経済的にも成り立って、ようやく音楽家としてやっていくことができるようになりました。そう言った意味でショパンを支えた1曲であると高橋さんは話しました。

パリ社交界で好まれた華やかで煌びやかな旋律に、ホール全体が彩られたようでした。

続いては『4つのマズルカ  作品17』です。マズルカは、男女がくるくる回る踊りで、ゆったりしたもの、勇壮なもの、テンポが速く軽快なものなど様々な種類があります。

高橋さんは

「マズルカはもともと農村で広まった民族舞曲で、ワイルドな雰囲気のある音楽ですが、ショパンはその音楽をもとにして芸術的に高めたものを作りました。ショパンのことを深く知ろうと思ったらマズルカを聴くのが一番ではないかと思うくらい、ショパンの心の言葉のようなものが溢れているような気がします」

と話しました。ショパンの魂とも言えるマズルカの旋律が会場に響き渡りました。

第1部最後の曲は、『ポロネーズ 第6番 英雄』です。

「ショパンの作品には珍しく和音も分厚い曲なので、ショパン自身がどんなふうに演奏したのだろうと思ってしまいますね。あまりショパン自身の演奏の記録がないような気がしますが、力強かったのかなと想像しています」

と話した高橋さん。

ショパンの祖国ポーランドへの熱い想いが伝わる力強く感動的な演奏でした。

後半はバラード第1番~第4番のバラード全曲のプログラムです。

『バラード第1番』は21~25歳の間に時間をかけて書かれた、とてもドラマチックな力作です。

『バラード第2番』は、出だしはバラードのもともとの原型とも言える踊りのリズムで書かれ牧歌的な雰囲気ですが、突然の嵐がやってきます。牧歌的な部分と激しい部分が交互に現れて、最後は悲しみのうちに終わる。聴く人に様々な物語を想像させる作品です。

『バラード第3番』は唯一長調で書かれた作品で、水の精と人間の男性の恋を描いた話にインスピレーションを受けて書いたと言われています。

「深い森の中の湖のほとりで、2人がダンスをするような雰囲気の部分も出てきますので、ぜひイメージしながらお聴きいただければと思います」

と高橋さんが話したとおり、お客様は情景を想像しながら聴いているようでした。

『バラード第4番」について高橋さんは、

「これはもう、ショパンの最高傑作と言っても良いのではないかと私は思っています。とても大きな感動の波が押し寄せてくる本当に素晴らしい曲です。私はこの曲が本当に大好きで、一生をかけて勉強していきたいと思っています」

と話しました。

後半は、ノンストップで演奏される4つのバラードに会場中が魅了されました。

鳴りやまない大きな拍手に、高橋さんは深くお辞儀をして

「本当にありがとうございました。とても暖かい拍手をいただいて、もうなんて幸せだろうと心から思います。酒田、鶴岡と、本当に私にとって忘れられない素晴らしい3日間になったと思います」

と話しました。

高橋多佳子さんには9月の小学校クラスコンサートから、1月14日のアナリーゼワークショップ、15日の酒田公演、そしてこの鶴岡公演と、幅広い活動を酒田市で実施いただきました。リサイタルにはクラスコンサートに参加した児童の皆さんも多くご来場いただきました。

アンケートでは「ショパンの素晴らしさが伝わってきました」「とても暖かい演奏で、何か大きなものに包まれるような感動を覚えました」「ぜひまた庄内にいらしてください」といった声が聞かれ、高橋さんのファンになったお客様も多かったことと思います。

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