酒田市民会館 希望ホール KIBOU HALL

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活動レポート

礒 絵里子 アナリーゼワークショップ

2023.11.9

希望ホール大ホール

希望ホールで行われるリサイタルについて、アーティスト自らがプログラムや楽曲・作曲家の魅力などをお話しする人気企画「アナリーゼ ワークショップ」。
今回は、12月17日(日)に開催される「礒 絵里子 ヴァイオリン・リサイタル」のプログラムについて、作曲家にまつわるエピソードや演奏を交えながら、ヴァイオリニスト・礒 絵里子さんとピアニスト・田村 緑さんにお話ししていただきました。

1.クライスラー

礒さん、田村さんが登場すると、開演を待ちわびた来場者から大きな拍手が。お二人により奏でられたのはクライスラー作曲の「ロンディーノ」です。伸びやかな調べが会場を包みます。礒さんも「大好きな作曲家」と言うクライスラーは、愛妻家だったそう。その奥さんがマネジメント能力に長けていたことや、有名な作曲家による楽曲の編曲として発表した曲を後年になって実は自作だと明かし、クラシック界の大スキャンダルになったことなどクライスラーについての様々なエピソードと共に、ユニークな人柄を紹介しました。
また「ロンディーノ」は、ベートーヴェンの「ロンド」からテーマを借用し作曲されたそうです。礒さんは、ベートーヴェンバージョンの冒頭部分の演奏を交えながら解説し「私はクライスラーの方がいい感じなんじゃないかしら?なんて思っています」と話しました。

2.モーツァルト

「モーツァルトは長調の明るい曲が多い作曲家ですが、ソナタ第21番ホ短調K304は当時パリへ同行していた母親が急死した時に作られた数少ない短調の作品です」と礒さん。悲しみがあふれる導入部分を田村さんが演奏します。

ソナタ形式についてホワイトボードで構成を解説し、ヴァイオリンやピアノがどのように展開していくか、それぞれ一部分を演奏し聴き比べました。

また「何調で作るか」が作曲家にとってはとても大切で、ハ長調は「勝利の調」、変ホ長調は「英雄の調」、イ短調は喜びが得られない「喪失などの調」と言われているそうです。

3.サン=サーンス

2年前が没後100年の記念イヤーだったサン=サーンス。中世から伝わるキリスト教画の題材だった「ダンス・マカブル(死の舞踏)」の絵画をスクリーンに映しながら「中世末期の終末観を表現した芸術的なモチーフだった」と解説します。

楽曲は、時計台の鐘の音から始まり、鐘が時刻を告げると死神が登場。墓の中から骸骨が出てきて踊り、ある動物が朝を告げることにより、骸骨たちは墓に戻っていく…というストーリーに沿いながら、それぞれのテーマを表現するためにどんな奏法を用いているか演奏を交えお話してくれました。「冒頭の鐘の音は何回鳴るでしょうか?答えは12月のリサイタルで」とのこと。皆さんも会場で数えてみてください。

4.ラフマニノフ

続いては生誕150年のラフマニノフです。今回演奏する「祈り」ピアノ協奏曲第2番は、マネージャーが同じでデュオで演奏活動もしていたクライスラーが、ラフマニノフの許可を得て編曲しています。「オリジナルはト長調ですが、クライスラーは調性をガラリと変えてハ長調で編曲しています」と礒さんは話します。それぞれの演奏を聴き比べてみました。

「オリジナルバージョンは、ヴァイオリンが弾いている部分をフルートが演奏していて音域が高めなんです。クライスラーは、ヴァイオリンの開放弦の一番低いソの音から始めたかったので、この調性にしたのかなと想像しています。想像を膨らませながら練習するのはとても楽しいんですよ」と教えてくれました。

5.グリーグ

最後の作曲家は「北欧のショパン」と称されるグリーグです。生誕180年となる今も、生家が残っており、生家や自然豊かな周辺の写真をスクリーンに映しながら、グリーグの人柄を紹介しました。今回演奏する「ヴァイオリン・ソナタ 第3番ハ短調Op.45」はグリーグ44歳のころの作品で、1番・2番は20代のころの作品だったことから、その約20年後に作られた楽曲です。イタリアの女流ヴァイオリニストが、グリーグの家を訪れたのが作曲のきっかけとなりました。モーツァルトの際にも解説した「ソナタ形式」ですが、グリーグのころになると厳密に形式を守るよりも、作曲家の自由度があったようです。この作品を礒さんは「おとぎ話のような作風かなと感じています」と話されました。

作曲家のエピソードや楽曲の構成・演奏方法など、お話は多岐にわたり、中身の濃い50分間となりました。アナリーゼワークショップに参加された方も、残念ながら参加できなかった方も、12月17日(日)のリサイタルで『ロマンティックな調べに包まれる、冬の午後のひととき』を過ごしませんか。

参加者の感想

  • とても楽しくてぜいたくな時間でした。ありがとうございました。ヴァイオリンの響きがものすごくすてきでした。礒さんの無茶ぶりに落ちついて応える緑さんはすごいです。(50代)
  • ヴァイオリンもピアノも情景が思い浮かぶような演奏でした。(10代)
  • たいへんお話がわかりやすく、またとても楽しかったです。お二人の仲の良さに癒されました。演奏すてきでした。(50代)
  • わかりやすく聞くことができました。(70代)
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