活動レポート
喜名雅 アナリーゼワークショップ
希望ホール大ホール
6月9日(金)
希望ホールで行われるリサイタルのプログラムについて、アーティスト自ら、プログラムや楽器の魅力、聴きどころについてお話しする人気企画の「アナリーゼワークショップ」。今回は7月8日(土)開催の「喜名雅 テューバ・リサイタル」のプログラムについて、テューバ奏者の喜名雅さんとピアニストの新居由佳梨さんにお話いただきました。
拍手に迎えられ、笑顔で登場したお二人。最初に披露したのは、エルガーの「愛の挨拶」です。お二人の優雅な演奏に、観客が一気に引き込まれます。
演奏後、まずテューバの音が出る仕組みや成り立ち、つくりについて説明していきます。
テューバの振動についてのお話では、新居さんが音を出しているベルに小豆の入った皿を近づけると、振動して音を立てます。振動をより感じてもらうために、喜名さんはテューバを持ちながら客席を巡回します。なかなかできない体験に、観客からは声がもれます。
続いては、音域についてのお話です。実際に音を出して比べながら、両方の楽器の音域を確かめていきます。
テューバについてのお話に続き、リサイタルのプログラムについて、演奏を交えながら、お話ししていきます。7月8日のリサイタルは、世界各国の名曲で構成されています。
最初に演奏したエルガーの「愛の挨拶」(イギリス)から始まり、イタリア生まれのモンティ作曲の、タンギング(舌を使って音を区切る奏法)を駆使した「チャルダッシュ」へと続きます。
ドイツからは、ワーグナーのオペラ音楽「夕星の歌(ゆうづつのうた)」。この曲は原曲のバリトンパートをテューバで演奏します。喜名さんが一部を演奏するだけでも、甘美な音色が会場に広がります。
テューバ・オリジナル曲であるロムハーニの「パラレルス」。喜名さんにとって初めて、人前で披露する曲だそうです。テューバのイメージとは異なり、軽やかな旋律が特徴的です。
次の「茉莉花」は、中国で有名な民謡の一つです。喜名さんは二胡(中国の伝統的な楽器)の演奏を見て、魅力を感じたそうです。お二人の演奏は、茉莉花(ジャスミン)の香りが漂ってくるような、優しい演奏で、本番で客席で聴くことがより楽しみになります。
ロシアからは、チャイコフスキーによるバレエ「眠りの森の美女」のワルツです。喜名さんはバレエ団のオーケストラでも活動しており、公演でも度々演奏される、バレエ音楽の名曲を今回取り入れました。
特に有名なフレーズをお二人が演奏すると、短い演奏でも瞬く間に美しい物語の世界へと、観客を誘います。
続いては、久石譲作曲による、映画「おくりびと」の楽曲。喜名さんは、酒田について調べている中で、「おくりびと」の舞台であることを知ったそうです。お二人が演奏すると、鳥海山や庄内の田園風景が浮かび上がってきます。
アルゼンチンからは、ピアソラの「リベルタンゴ」です。先ほどとはうって変わり、喜名さんは情熱的な演奏を披露。南米の風が会場を吹き抜けます。
今回のリサイタル唯一のテューバソロである、クラフトの「エンカウンターズⅡ」(アメリカ)。ハーフバルブや重音奏法(演奏しながら歌う)など、幅広い表現が用いられており、喜名さんは楽譜を参照しながら、説明していきます。
次は、新居さんのピアノソロ、クライスラーの「愛の悲しみ」。ラフマニノフによる編曲です。新居さんは楽譜を参照しながら、半音階や装飾音などの演奏技法について説明していきます。ウィンナ・ワルツをベースに、様々な妙技を取り入れることによって、より豊かな世界観が広がります。
ラストは、映画音楽の巨匠、ジョン・ウィリアムズの「テューバ協奏曲」です。3つの楽章から成り、まるで映画のようにシーンが展開していきます。テューバの音域や機動性も最大限に活かした、リサイタルを締めくるのにぴったりな作品です。
喜名さんが1楽章のさわりだけ演奏すると、まるでこれから冒険に出かけるかのような、高揚感が、会場を包みます。
最後は客席との質疑応答が行われ、熱心な質問と回答が飛び交いました。
また、終了後には、テューバを演奏しているという小学生と喜名さんが交流する場面も。
喜名さん自身の経験や演奏について、丁寧に語る喜名さんのお話を熱心に聞く姿が印象的でした。
終了後のアンケートでは、
「テューバの魅力がつまった1時間でした」
「曲の歴史背景や技術的なことが学べて良かったです」
「リサイタルがさらに楽しみになりました」
などの声が寄せられました。