活動レポート
礒絵里子 ヴァイオリン・リサイタル
2023.12.17
希望ホール 大ホール
ヴァイオリニスト 礒絵里子さんによるリサイタル「礒絵里子 ヴァイオリン・リサイタル~ロマンティックな調べに包まれる、冬の午後のひととき~」が開催されました。
礒さんとピアニスト 田村緑さんは、11月上旬本市に約一週間滞在し、市内小学校でのクラスコンサートやリサイタルへ向けたアナリーゼワークショップ、ひらたタウンセンターでの地域ワンコインコンサートを行いました。今回のリサイタルは、その集大成ともいえる公演です。
定刻となり、華やかな衣装に身を包んだお二人がステージに登場すると、待ちわびた客席から大きな拍手が送られます。ワルツの3拍子が軽やかで優雅なクライスラー作曲「ロンディーノ」でリサイタルは幕を開けました。当日は今年初めて市街地でも本格的に雪が降り、時折吹雪くことも。礒さんは「このお天気の中、ようこそお出でくださいました」と、客席に語りかけます。
次に、「古いウィーンの舞曲集」とも言われ、礒さんと田村さんが「愛三部作」とも呼んでいるクライスラー作曲「美しきロスマリン」「愛の悲しみ」「愛の喜び」を3曲続けての演奏です。
ロスマリンはローズマリーの花のことで、ドイツ語で「小さな可愛らしい女の子」を表す愛称でもあるそうです。ウインナ・ワルツの軽やかな演奏が会場に響きます。愁いを帯びたメロディで始まる「愛の悲しみ」、そして曲名の通り喜び溢れる晴れやかな「愛の喜び」へと演奏は続き、3曲それぞれの愛の世界へと観客は引き込まれます。
続いてはモーツァルト作曲の「ヴァイオリン・ソナタ第21番 ホ短調K.304」です。モーツァルトの楽曲は長調の明るい曲調が多い中で、母親の死など衝撃的なことがあった時期に作曲されたこの曲は、珍しく短調で悲しみ溢れる曲調となっています。礒さんは「11月のクラスコンサートでも、このエピソードを紹介しながら2楽章を演奏したのですが、この曲を凄くよかったと言ってくれる児童が何人もいて感激しました」と、クラスコンサートの思い出を紹介。短調の劇的な調べの途中に現れる優しいメロディは、母と過ごした時間の回想を彷彿させます。
前半最後の楽曲は、サン=サーンス作曲「ダンス・マカブル」です。冒頭、真夜中12時を告げる鐘の音から物語が始まります。その鐘の音を合図に死神が現れ、墓の中から骸骨たちが出てきて踊り狂います。その踊りは次第に激しさを増していきますが、鶏が朝を告げると慌てて墓に戻っていき、再び静寂が訪れます。ヴァイオリンとピアノで紡ぐ「少し怖いけれどユーモラスな世界」。ヴァイオリンのさまざまな奏法が駆使されて表現される物語に、客席は魅了されていました。
第二部は、今年生誕150年のラフマニノフ(クライスラー編曲)の「『祈り』ピアノ協奏曲 第2番 第2楽章より」で始まりました。優しく温かなメロディが響き渡り会場を包みます。
本編最後は、グリーグの「ヴァイオリン・ソナタ 第3番 ハ短調Op.45」です。「この曲はとても酒田に合うような気がしています」と礒さん。「この曲は、どんどん転調していって曲の雰囲気が変わっていくんです。11月と昨日、今日と酒田に来て、雨が降ったと思えば5分後に止んだり、風が吹いたり、そうかと思えば太陽が出てきたり……と、次々と変わる風景が、今からお聴きいただく曲と合っている気がしました。私たちが感じた酒田の想い出を乗せて演奏します」と演奏に入ります。
ドラマティックに次々と展開していく演奏に会場は魅了され、3楽章からなる約23分の演奏が終わると、会場は大きな拍手に包まれました。
鳴りやまない拍手に応え、ステージに戻ったお二人。
アンコールは、耳馴染みのある「エリーゼのために」をジャズアレンジしたファジル・サイ作曲「フォー・エリーゼ・ジャズ」と、ヴァイオリンが鋭く情熱的なピアソラ作曲「リベルタンゴ」の2曲を演奏し、リサイタルは盛況に幕を閉じました。
たくさんの感想をいただきました
- サン=サーンスのダンス・マカブルが面白かった。どの曲もきれいなヴァイオリンとピアノで楽しかった。(小学6年生)
- 小学生の息子から話を聞き興味を持って聞かせてもらいました。アウトリーチの話を織り交ぜてとても楽しい時間でした。(30代)
- ヴァイオリンの音色を普段生で聴く機会がないので優しくあたたかい音に癒されました。リフレッシュできました。お二人の人柄もやわらかく、外が冬の嵐とは思えないあたたかい時間だった。どうもありがとうございました。(40代)
- すごいアーティストなのに気さくなお人柄でびっくりしました。骨、すごく踊っていました。ロックですね。田村さんのピアノも、礒さんと息ぴったりでとても素晴らしかったです。モーツァルトの響きがものすごく鳴っていました。どの曲も素敵でした。(50代)
- ヴァイオリニストの方が曲の内容を説明して下さいますので、楽しく聴くことができました。寒い日でしたが、心が暖かくなるコンサートでした。(80代)
プログラム
- クライスラー/ロンディーノ
- クライスラー/美しきロスマリン
- クライスラー/愛の悲しみ
- クライスラー/愛の喜び
- モーツァルト/ヴァイオリン・ソナタ 第21番 ホ短調 K.304
- サン=サーンス/ダンス・マカブル
- ラフマニノフ(クライスラー編曲)/「祈り」ピアノ協奏曲 第2番 第2楽章より
- グリーグ/ヴァイオリン・ソナタ 第3番 ハ短調 Op.45
≪Encore≫
- ファジル・サイ/フォー・エリーゼ・ジャズ
- ピアソラ/リベルタンゴ