酒田市民会館 希望ホール KIBOU HALL

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活動レポート

新野将之 新堀小学校クラスコンサート

国内外のコンクールで多くの受賞歴を重ね、(一財)地域創造公共ホール音楽活性化事業アーティストとして全国的に活躍する打楽器奏者の新野将之さんが、酒田市内の小学校を訪問し実施したクラスコンサート。11月の希望ホールでの公演に向けて、アーティストが一定期間市内に滞在し、地域との交流と、アートの魅力を届ける「アーティスト・イン・レジデンス事業」の一環として宮野浦小学校、松陵小学校、田沢小学校、新堀小学校、若浜小学校、浜田小学校でクラスコンサートを開催。コロナ禍ということもあり、感染対策を徹底しての実施となりました。どの小学校でも、目の前で繰り広げられる大迫力の演奏に、児童たちは目を輝かせながら聴き入っていました。今回は新堀小学校でのクラスコンサートの様子をレポートします。

ジェンベという太鼓を叩きながら、大きな掛け声とともに登場した新野さん。

アマゾンの奥地から聞こえてくるような不思議な掛け声と迫力ある太鼓の音に、児童たちは一気に引き込まれていきました。

演奏が終わると大きな拍手が鳴り響きます。新野さんが自己紹介をして、楽器の説明が始まりました。

ジェンベは、くりぬいた木の上にヤギの背中の皮を張って作られたアフリカの楽器。叩く位置や手の形で音色が変わります。大昔のアフリカの人々は、神様に祈りをささげる儀式で使っており、音楽のためではなく祈りの儀式の道具として使われたのがこの楽器の生まれたきっかけでした。

次に紹介するのはトライアングルとカスタネット。 普段、音楽の授業で使っている楽器でも、プロの手によって素晴らしいリズムや音色が奏でられると、児童たちは興味津々です。
続いてはスネアドラムです。
「この楽器を知っている人?」との新野さんの問いかけに「小太鼓!」の声が上がります。
「正解!では英語での名前を知っている人はいるかな?ちなみに太鼓は英語でドラムです」との新野さんの声に、「スモールドラム!」の声も上がりますが…「スネアドラム!」「正解です!」

スネアドラムは、裏側についているスナッピーという細いコイル状の金属を、ストレイナーというレバーを使って切り替えることで、音を変えることができます。

伴奏などで演奏することが多いスネアドラムですが、実はソロの曲もあります。ポルトガル語で「冒険」の意味をもつ『アスヴェンチュラス』という曲が始まりました。

太鼓の表面だけでなく、側面や縁、スタンドの部分を叩いたり、時には手で叩いたり擦ったりして様々な音が出る様子に児童たちは釘付けです。

次に演奏するのは、音楽室にあるタンバリン。児童たちにも親しみ深い楽器ですが、これまで紹介してきた金属(トライアングル)・木(カスタネット)・太鼓(スネアドラム)の3つが合体した、実はすごい楽器で、①叩く②振る③擦る、という3つの奏法で異なる音を奏でることができます。

ここで共演者であるマリンバ奏者の藤澤仁奈さんが登場し、ボビー・ロペス作曲『カンバセーション』の演奏が始まりました。

新野さんと藤澤さんが向かい合わせになって、まさに二つのタンバリンが掛け合いながら会話しているように、楽しい音楽が流れます。

続いて紹介するのはマリンバ。マは「たくさん」、リンバは「木」という意味。もとは地面に深く穴を掘り、その上に木を渡したものを叩いて音を鳴らしたことがマリンバの始まりでした。

音を響かせるためには空間が必要であり、その空間を作るために地面に穴を掘って音を鳴らしたのだそうです。

そして、そのマリンバを鳴らすマレットの紹介です。色とりどりのマレットを紹介する新野さん。硬い毛糸と柔らかい毛糸がまかれたマレットの音色を聴き比べて違いを感じてみます。マレットが違うと全く異なる音色に聴こえます。

新野さんは、曲ごとに絵の具を選ぶようにマレットを選んでいるとお話しして、ここからはクリップボードと色鉛筆やクレヨンを使ってのワークショップです。

マリンバで新野さんと藤澤さんが演奏する曲を聴いて、感じたイメージを児童たちが紙に描いていきます。演奏されたのは、渡邉達弘作曲『空想で描く24のクレヨン画より海辺にそよぐ椰子の木のダンス』。

演奏が始まると、初めは少し悩んでいた児童も筆を手にとり、思い思いに自分の感じたイメージを紙に表現していきます。

児童たちは「夜から朝になる感じ」「何かをつつむイメージ」「ダンス」「朝の太陽がのぼってくる感じ」「水になにかが落ちたイメージ」「悩んでいるような感じ」と自分の絵を見せながら紹介しました。新野さんは皆の絵を見てにこにこしながら「すごいね」「いいね!」「拍手!」「上手だね」と発表してくれた児童一人ひとりに温かい声をかけていました。最後にできあがった絵を皆で掲げて見せ合いました。

新野さんは「算数は必ず答えが一つだけど、音楽はそうじゃない。同じ曲を聴いても、人によって違う感じ方をする。だから他人の感じ方が自分と違っても、そういう感じ方があるんだ、面白いなと、お互いを認め合えるのが音楽の魅力。正解を考えずに自分の感じたことを素直に受け止め、他の考えも認め合える人になってほしいなと思います」

と児童たちに語りかけました。

「次で最後の曲になります」という新野さんの声に、「えーもっと聴きたいのに!」という声が上がります。

最後は、マリンバと多くの打楽器を使ったデュオの加藤大輝作曲『ラスト・ダンス」。

藤澤さんのマリンバが奏でる緩やかで美しく、豊かな響きのメロディと、新野さんのたくさんの種類の打楽器が刻むダイナミックで迫力あるリズムに児童たちは時折体を揺らしながら聴き入っていました。

演奏後の感想や質問にはたくさんの手が挙がり「新堀小のために世界で活躍する人が来てくれてすごかった」「マレットを千本も持っていることにびっくりした」という声が聞こえました。

クラスコンサートが終わってからも児童たちは興奮が冷めやらない様子で、児童同士で楽しそうに感想を話していました。

初めのうちは少しだけ緊張したような面持ちの児童たちも、新野さんと藤澤さんの奏でる音楽と、お二人の人柄とふれ合うことによって、だんだんと打ち解けていき、演奏に夢中になっていく様子がとても印象的でした。また、クラスコンサートが始まる前と後とでは、身近な打楽器(カスタネットやタンバリン)への興味、関心が明らかに変わった様子で、短時間ではありましたが、児童にとって、音楽に興味を持つきっかけになったのではないでしょうか。

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