酒田市民会館 希望ホール KIBOU HALL

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活動レポート

新野将之アナリーゼワークショップ 

希望ホール 大ホール
2021年10月8日(金)

全国各地での演奏活動やアウトリーチ活動を精力的に行っている打楽器奏者 新野将之さんが、11月の希望ホールでの公演で演奏するプログラムについて、演奏を交えながらお話するアナリーゼワークショップ。この事業は、一流の芸術をより身近に感じてもらい、アーティストと地域が交流することを目的とした、「アーティスト・イン・レジデンス事業」の一環として実施しました。

登場した新野さんが1曲目に演奏したのは、風間真作曲『メランコリー・イン・ザ・レイン』。

邦題は『水浸しの憂鬱』で、叶わぬ片思いを表現した曲です。

ビブラフォンの暖かくも切ない音色が会場を包み込みます。

実はこの曲、新野さんの高校の音楽の先生が作曲されたギターの曲で、新野さんご自身がビブラフォンにアレンジされたとのこと。高校の先生との交流についても触れながら、「何か結果を出すことで、周囲の人はきっと応援してくれるようになる」とお話いただきました。

この曲は、ビブラフォンならではの様々な奏法を用いて演奏されます。腹部をビブラフォンに付けて音を1音だけ止めるダンプ奏法や、鍵盤に顔を近づけ打鍵音を口腔内に響かせて変化させるワウワウ奏法など、初めて見る奏法に会場のお客様は興味津々な様子。

J.スペンサー作曲の『グルーヴ・フォー・ホープ』では、曲が作られるまでの新野さんと作曲者のお話がありました。

作曲者であるJ.スペンサーの曲を演奏して動画サイトに投稿していた新野さん。それを見た作曲者が感銘を受け、メッセージをくれたことをきっかけに作られた曲なのだそうです。作曲者とメッセージでやりとりをする中で、LGBTQ+や性的マイノリティの方々に向けた作品にしようと歌詞が決まっていきました。

新野さんは、「日本にいながら世界とつながってこのように仕事ができる。バッハの曲のことを直接バッハには聞けないけれど、こうして現代に生きる作曲家と話しながら曲を作っていくという貴重な経験だった」とお話されました。

最後はI.クセナキス作曲『ルボン.B』。この曲は、いろいろな楽器を組み合わせて演奏する「マルチパーカッション」です。

作曲者のI.クセナキスは、作曲家でありながら建築家で、演奏するのが不可能なのではないかと感じるくらい楽譜が難しいという新野さん。

「この難解な楽譜は今のコロナ禍という社会状況と少し重なって感じる。無理だとサジを投げるのではなく、どうしたら改善できるのか、どうしたら乗り越えられるのか、とそんなふうに考えて一歩前に踏み出せるのが人間。自分も挑戦をし続けて、少しずつ前に進んでいきたい」と力強くお話して締め括りました。

アナリーゼの最後には客席から質問を受けました。

「音楽室にある鉄琴と木琴に挑戦しようと思っています。アドバイスをお願いします」という小学生からの質問に、新野さんは実際にマレットを持ちながら「真ん中より少し下の方を、手の甲を上にして持つように意識してみて。ぜひ挑戦してみてね!」と優しく回答していました。

また、「コロナ禍で新たに挑戦している音楽活動などありますか?」との質問には、「レッスンや公演が3か月分ほどなくなってしまい絶望を感じたが、逆に時間があるからこそ、レッスン動画を配信したり、11月のコンサートで共演する藤澤仁奈さんと新たなCDを収録して発売したりと、普段はできないことに挑戦しました。

小学校のクラスコンサートでは、コロナ禍で子どもたちに発言を求められなくなってしまったのですが、代わりに絵を描いてもらって表現するという新たな方法に取り組んだりもしました。制限かかっているからこそ、新たな発想を思いつくことができました」

と話しました。

アンケートでは「力強いメッセージに涙が出ました」「いろいろな可能性を自ら考えることが大切だと気づかされました」との感想が聞かれました。

打楽器の奏法や曲が作られるまでの過程、独特な楽譜の数々など、普段は聞けない打楽器の話を聞けたことで、11月7日の公演がより楽しみとなるアナリーゼワークショップとなりました。

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