酒田市民会館 希望ホール KIBOU HALL

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活動レポート

高橋多佳子 松山小学校クラスコンサート

酒田市立松山小学校

希望ホールでは、今年度から、国内外で活躍するアーティストが酒田市に一定期間滞在し、公演や、市内の小学校や特別支援学校でワークショップやミニコンサートなどを開催する、「アーティスト・イン・レジデンス事業」を実施。一流のアーティストをより身近に感じてもらい、アーティストと地域が交流する取り組みです。

レジデントアーティストの一人、ピアニストの高橋多佳子さんは、第12回ショパン国際ピアノ・コンクールで入賞され、以後、国内外で数多くの賞歴を重ね、オーケストラとの共演や、学校などでの演奏活動など、幅広く活躍しています。

9月の滞在では、一條小学校、琢成小学校、松山小学校、八幡小学校へのクラスコンサートを実施。コロナ禍の影響でうち3校がオンラインでの開催となりました。今日は松山小学校へのオンライン版クラスコンサートの模様をレポートします。

この日は松山小学校5年生15名を対象にクラスコンサートを行いました。

画面越しではありましたが、オンラインとは思えないほど、スムーズにコミュニケーションをとることができ、児童のみなさんには音楽に親しんでもらうだけでなく、高橋さんとふれあえた機会となりました。

授業が始まると、教室のテレビの画面に、希望ホールの映像がガーシュウィン作曲『ラプソディ・イン・ブルー』の演奏とともに流れ始めます。映像はまるで自分が希望ホールを実際に訪れたかのようにカメラがホールの中を進んでいき、ホワイエではホールスタッフがお辞儀をして迎えます。

客席に着くと会場が暗くなり、高橋多佳子さんの演奏が始まりました。

ドビュッシー『ベルガマスク組曲より 第3番 月の光』

まるで、希望ホールの客席に座って本当にコンサートを聴いているかのように、児童たちは美しい音色に耳を澄ませます。演奏が終わると、リアルタイムで希望ホール小ホールにいる高橋さんと中継がつながりました。

「今日はこうして離れたところからではありますが、皆と一緒に音楽の楽しさを感じたいと思います。先ほど希望ホールの映像が映ったときに、皆が「すごい!」と言いながら反応してくれているところも見えていましたよ」という声に「えー!本当!?」と大喜びの児童たち。

「私の声が聞こえていたら手で丸を作ってね」という高橋さんの声に、児童たちは一斉に手で丸を作って応えます。

「今、演奏した曲を聴いて、感じたイメージを教えてくれる人はいますか?」との高橋さんの問いかけに、「色で表すと赤とオレンジのイメージだった」「やさしい感じがした」「少し寂しい感じがした」など思い思いの感想が聞こえてきます。

「それでは、今の曲を朝・昼・夜の音楽のどれかだとすると、どのイメージに近いと思う?」と高橋さんが投げかけると、「朝の音楽」に数人の手が挙がり「夜の音楽」に大半の手が挙がりました。

「実はこの曲は『月の光』というタイトルです。夜のイメージと手を挙げた子が多かったから、作曲者であるドビュッシーのイメージと一致していた人が多かったのかもしれません。だけど、私はさわやかな朝のイメージを持っています」という高橋さん。

「音楽は、聴く人が感じてくれるそのものが正解。自由にイメージを膨らませて聴いてほしい。」というメッセージが児童たちに伝わったようです。

続いて演奏する曲の作曲家の肖像画を画面に出すと、口々に「ショパン!」「有名な人!」と声が上がります。

「なんだか嬉しい」と笑顔を見せる高橋さん。

「ショパンは1810年にポーランドに生まれた人です。作曲した曲のほとんどがピアノ曲で、人生のすべてをピアノに捧げた人。ショパンは私にとって特別に大好きな作曲家です。」

高橋さんが奏でるショパンのピアノ曲のフレーズを聴いて、子供たちはイメージした感情を自由に発表します。

『別れの曲』には「ちょっとだけ悲しい」という感想が出ました。長調で書かれているのに悲しみや切なさを感じる。そういった感情をよく表している曲なのだと高橋さんは話します。

『革命』には「楽しい感じ」「激しい感じ」という感想が出ます。

「この曲はポーランドが戦争に負けてしまったときに作られた曲と言われています。

ショパンは、言葉では表せない心の中のものをピアノで表現しようとした人だと私は思います」という高橋さん。 子どもたちそれぞれが話す感想に、笑顔で「いいね!」「すごい!」「なるほど!」と何度もうなずきながら聞く高橋さんに、画面越しではありながらもだんだんと児童たちが打ち解けていく様子がうかがえました。

次はショパン作曲『幻想即興曲』

「左手が3音弾く間に右手が4音弾くため左手と右手がずれることで、音が多くたくさんなっているように聞こえるので、そのあたりに注目して聴いてほしい」とのお話に、児童たちは手の動きにも注目しながら聴き入っていました。

続いてはピアノの構造についてのお話です。

ピアノの内部の写真を見せながら、鍵盤を押すとハンマーが上がって3本の弦をたたいて音を出すしくみを説明していきます。3本のペダルについても、実際に使って違いを聴き比べながら、(右のペダルは音が輝いて広がって豊かになり、左のペダルは踏むと鍵盤が右にずれることで鍵盤の先についていたハンマーも右にずれる。すると、3本の弦をたたいていたのが2本に減るので、音が小さくなり、音色が少し変わる。真ん中のペダルはどこかの音だけ伸ばして、他を切る効果がある)それぞれのペダルの効果を学びました。

いよいよ最後の曲は、ガーシュウィン作曲『ラプソディ・イン・ブルー』。

打楽器のように弾く部分や、グリッサンドという爪を使った奏法など面白いテクニックにも注目しながら、ジャズのテイストが入った曲に、児童たちはノリノリで聴いていました。

「これから素晴らしい可能性を秘めている皆さんには、ぜひ色々なことにチャレンジして、やってみたいことを見つけてほしい。そして、やりたいことが見つかったらそれに向かってひたむきに努力をしてみてほしい。するとどんどん可能性が広がっていって人生が豊かになると思います」というメッセージを子供たちに贈ってクラスコンサートを締めくくった高橋さん。リモートでの実施ではありましたが、演奏者の人柄も音楽の楽しさも感じることができ、音楽で児童たちと間近につながることのできた素敵な時間となりました。

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