酒田市民会館 希望ホール KIBOU HALL

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活動レポート

セレノグラフィカ コンテンポラリーダンスワークショップ

関西を拠点に国内で幅広く活動を展開するダンスカンパニー・セレノグラフィカの隅地茉歩さんと阿比留修一さんが、酒田特別支援学校を訪問し、ダンスワークショップを行いました。セレノグラフィカさんは全国の公共ホールでのワークショップはもちろん、500を超える教育機関へのアウトリーチの実績を持つ、非常に経験豊富な方々です。この度、荘銀タクト鶴岡と連携して行っているダンス事業「Dance Connect Shonai(ダンスで庄内をつなごう)」の一環として、9月28日~10月2日、両館でセレノグラフィカさんをお迎えし、それぞれワークショップ、アウトリーチ、研修会等を行いました。

酒田特別支援学校へのアウトリーチは、9月30日に実施。午前中は、聴覚障がい教育部の小・中学部の皆さん5名、知的障がい教育部の中学部3年生の生徒の皆さん7名、午後は知的障がい高等部1・2年生の皆さん23名に向けて、ダンスワークショップを行いました。今回は、このダンスワークショップの一部をレポートします。

1コマ目は、聴覚小学部4名、聴覚中等部1名の計5名が参加しました。

「まほさん、あびちゃんと呼んでね」

お二人は子どもたちに声を掛けます。(本レポートでも「まほさん」、「あびちゃん」と呼びます。)『出会いのダンス』 が始まりました。

あびちゃんが、クルクルと回りながら踊り、一人ひとりに握手していきます。コミカルな踊りに児童たちは釘付け。「面白い!!」と嬉しそうに声をあげる児童もいます。続いて、まほさんが踊ります。音楽に合わせ、滑らかに緻密に変化するその身体の動きを、みんな、集中して見つめます。曲が終わると、まほさんは前かがみのポーズのまま、微動だにしません。あびちゃんが何とかまほさんを動かそうとします。身体と表情で楽しさを表現する二人の息の合った動きに、大きな笑い声が起きます。

続いて、アシスタントとして参加した鶴岡市の市民ダンサー「きっくさん」も加わりました。きっくさんは、県内の障がい者施設等で、ダンスワークショップを数多く実施する方です。

講師が3人となり、『ダンスでてあらい・うがい』です。児童、教職員も、動きを真似て踊ります。宇宙を漂っている様子、ロボットのような動き、講師に導かれてみんなの身体がどんどん自由に動きます。

「すごい、この人たちはなんでもできます。なんにでもなれます!」

まほさんが言うと、

「OK!」

あびちゃんが答えます。

次は、『パンパン8(エイト)』。頭、肩、胸、おなか、お尻、ふともも、膝とふれていき、最後に手拍子。リズムに合わせて、8つの動きでダンスします。最初はゆっくりですが、少しずつリズムが速まり、みんな必死についていきます。最後の超高速までやり遂げると、全員で拍手。顔を見合わせて、「がんばったね」と声を掛け合います。

「あびちゃんのまねをしてください」

『まねっこダンス』の始まりです。あびちゃんの表情、動きを的確にとらえ、みんなで真似て踊ります。続いて、きっくさん、まほさんを真似た後、教職員・子どもたちも一人づつ、前に出て想いのままに踊ります。その自由で独創的なダンスに会場は大盛り上がり。

「みんな、先生にもなったし、お友だちにもなったね」

まほさんが声を掛けます。

最後は『ダンストレイン』です。講師を先頭に、みんなが並んで作る列車が、体育館全体を、ダンスしながら縦横無尽に走ります。

「ダンストレイン、出発!!」

あびちゃんの合図に合わせて、列車がスタート。線路沿いにいる人に、歓声を上げながら手を振ったり、山道を登ったり、海に潜ったり。翼をはばたかせて空も飛びます。自由自在に進む列車に、みんな満面の笑顔です。

列車が終着駅に到着すると、ワークショップも終わりの時間となりました。代表児童が、講師3人にお礼の気持ちを伝えます。

「ダンス、とても楽しかったです。もう一回、踊りたいです。今日はありがとうございました」

体育館いっぱいに、ダンスの魅力と喜びが満ち満ちたワークショップでした。

午後に行った3コマ目は知的障害高等部の皆さん23名が参加しました。車いす、歩行器を使う生徒もいます。講師それぞれから明るく声をかけられると、すぐに緊張がほぐれ、和やかな雰囲気になりました。

『であいのダンス!』では、まほさんが踊りながら

「元気?」

と生徒一人ひとりに声をかけ、優しく手にタッチしていきます。

曲が終わると同時に、まほさんが固まって動かなくなりました。

「大丈夫?」「死んじゃったの?」

生徒が代わる代わるまほさんに話しかけ、中にはじっくり顔を覗き込む者もいます。あびちゃんがふれると、まほさんはそれに促されて、腕や顔を動かします。続いて生徒も、まほさんの手や肩にふれ、なんとか彼女を動かそうとします。

まほさんと、あびちゃんが静かに踊り始めます。その滑らかで楽しい動きに合わせて、生徒も自由に体を揺らします。講師のダンスに合わせて、自然と手拍子が起き、高くジャンプする生徒もいます。

ダンスが終わるとまほさんがお話します。

「まほさんが、死んだと思った?みんな、生き返らせてくれてありがとう」

生徒も「うん。生きててよかった~」と返します。

『スキップ&ストップ』が始まりました。みんなで体育館中を自由にスキップしたり走ったり。講師の「ピタッ!」という合図と同時に、一斉に身体の動きを止めます。片足を挙げたまま二人で支え合う生徒、今にも飛び跳ねそうな格好の生徒、十人十色のポーズが体育館に溢れます。

「すごい!みんな止まってる!」

「そのポーズ、美しい~」

講師がそれぞれの姿を褒めると生徒の皆さんもお互いを見て、褒め合っていました。

『まねっこダンス』では、鏡に変身した生徒が、あびちゃんを見つめ、彼が動き始めるのをじっと待ちます。徐々に動き出し立ち上がるあびちゃん。生徒は、コミカルなあびちゃんの踊りを鏡になって映し出します。あびちゃんと一緒に踊る生徒に、周囲からは「がんばれ~」と声がかかります。

「次は、きっくさんの鏡になろう~!」

きっくさんの、アクロバティックな動きに刺激され、鏡役の生徒に、他の生徒も加わり、歌ったり飛び跳ねたり、自由に踊ります。ダンスの最後は、全員で思い思いのポーズでフィニッシュ。大きな拍手と歓声があがりました。

『からだを休めよう』

全てのワークが終わると、少しの時間、身体を休めます。まほさんとあびちゃんが、穏やかに話しながら、一人ひとりの生徒の身体に優しくふれその疲れをほぐしていきました。床に横になる者、壁際の平均台に腰かける者、みんな好きな場所で、ゆっくりと体を休めながら、楽しかったダンスを振り返ります。静かでとても穏やかな時間が過ぎていきました。

ワークショップを終えた生徒の皆さんの表情には、喜びと満足感があふれていました。終了後も、講師と別れを惜しんで、積極的にコミュニケーションを取り続ける生徒の姿が見られました。

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