酒田市民会館 希望ホール KIBOU HALL

bg

活動レポート

髙橋和貴アナリーゼワークショップ 

酒田市総合文化センター ホール

希望ホールでは、今年度から、国内外で活躍するアーティストによるアーティスト・イン・レジデンス事業を行っています。

アーティスト・イン・レジデンス事業は、アーティストが酒田市に滞在し、公演やアナリーゼワークショップ、市内の小学校や特別支援学校でワークショップやクラスコンサートなどを開くもので、アートをより身近に感じていただくための企画です。

今回は、山形交響楽団ソロ・コンサートマスターである髙橋和貴さんと、ピアニストの三輪郁さん、そして山形交響楽団専務理事である西濱秀樹さんによるアナリーゼワークショップの模様をレポートします。

三輪郁さんによるモーツァルト作曲『きらきら星変奏曲』で幕が開きます。

煌めくピアノの音色が会場中に響き渡り、演奏が終わると会場からは拍手が上がりました。

続いては、山形交響楽団専務理事である西濱秀樹さんの司会で、ピアノの歴史について三輪さんとともに辿っていきます。

ピアノは、初めは弦を叩くのではなく、はじくことで音を鳴らしていた楽器ですが、時代の変遷とともに徐々に現代の形に近づいていく様子を辿りました。

ここで、西濱さんからの「三輪さんがピアノを始めたのは何歳で、きっかけは何だったのでしょうか?」との質問に三輪さんは、「5歳のときです。両親曰く、私は言葉を話し始めるより先に歌を歌ったのだそうです。遊び道具のひとつとしてなんとなく弾き始めたのがきっかけでした」とのエピソードがありました。

ここでもう一曲、三輪さんによる演奏です。「せっかくなのでお客様にお聴きになりたい曲を聞いてみましょう。ドビュッシー『喜びの島』か、ショパン『革命』どちらをお聴きになりたいですか?」という三輪さんの言葉に会場内のお客様がそれぞれ手を挙げます。

接戦でしたが、少し数の多かった『革命』を演奏してくださることに。激しくも切ない旋律に、会場中が引き込まれました。

続いては、いよいよ山形交響楽団ソロ・コンサートマスターの髙橋和貴さんが登場し、バッハの無伴奏パルティータより『ガボット』が演奏されます。明るく朗らかなヴァイオリンの音色が響き渡り、会場からは拍手が湧きました。

1週間の滞在で酒田市内の小学校にアウトリーチ事業で訪問した髙橋さん。

「1日に2回、小学校5年生に向けたクラスコンサートを行っていて、演奏だけでなく、楽器の構造やヴァイオリンの歴史、ヴァイオリニストの一日などについて子供たちに話しています。とにかくどの学校も、子供たちの目の輝きがすごい。自分も子供たちと一緒に、音楽とふれあう時間を楽しんでいます」とご挨拶がありました。

続いては西濱さん、髙橋さんと一緒に、今度はヴァイオリンの歴史を辿っていきます。

ヴァイオリンは、弓で弦を擦って音を出すため、擦弦楽器ともいわれています。現代に向かって進化してきたピアノとは対照的に、ストラディバリウスの時代(1700年代)にほとんど完成されたとも言われているヴァイオリンについて、その変遷を辿りました。

髙橋さんと西濱さんが繰り広げる軽快なトークに時折会場からは笑いがこぼれます。

続いては、髙橋さんと三輪さんによるデュオの演奏です。

モーツァルトの『ヴァイオリン・ソナタ』は、「ヴァイオリン・ソナタ」という名前でありながらも、この時代の主役はまだヴァイオリンというよりもむしろピアノでした。メロディの多くをピアノが奏で、そこにヴァイオリンが寄り添うように歌う、というのが当時のスタイルだったそうです。

華やかなピアノと伸びやかに歌うようなヴァイオリンが響き合いました。

続いてはベートーヴェン『ヴァイオリン・ソナタ 春』。

「どうしてこの曲をプログラムに選ばれたのですか?」という西濱さんの問いかけに、

「2月は暦の上では春。まだ肌寒い時期ではあるが、皆さんと素敵な春を迎えられるようにという気持ちを込めました。加えて、モーツァルトのソナタとベートーヴェンの『春』にはどことなく、何かつながりがあるように感じて、この2曲を選びました」と髙橋さん。

西濱さんから、「『春』が書かれた1800年~1801年、この時期にベートーヴェンは交響曲を書き始めました。先ほどのモーツァルトのソナタではピアノが主であったのが、ベートーヴェンはこのソナタを機にヴァイオリンを主体にした曲を書いていきます。『春』はヴァイオリンから曲が始まるという、当時としては画期的な曲でした」との説明がありました。

「『春』はタイトルどおり喜びに満ち溢れた曲。モーツァルトはまさしく天から授けられたような音楽である一方、ベートーヴェンは特に後期、人間的な苦悩やその生き様が表れる音楽に心を打たれます。ですが、この時代はまだモーツァルトの影響を大きく受けている様子を窺うことができます」と髙橋さんはお話されました。

2月にはヴァイオリンとピアノによる素敵な春の音色に希望ホールが彩られることでしょう。

終演後には「本番がとても楽しみになりました」「2月の公演が待ち遠しいです」という感想が聞かれました。

error: