活動レポート
地域ワンコインコンサートvol.1~高橋多佳子
八幡タウンセンター 交流ホール
6月6日から1週間酒田市に滞在し、酒田市内の小学校4校でクラスコンサートを実施したピアニストの高橋多佳子さんが、八幡タウンセンターの交流ホールにてミニコンサートを開催しました。一流の演奏を、地域の身近な施設でお届けする今年度よりスタートした新企画、「地域ワンコインコンサート」の第1回目です。こちらは9月の希望ホールでの公演に向けて、 アーティストが一定期間市内に滞在し、地域との交流を図りながら芸術の魅力を届ける事業『芸術家・地域ふれあい事業』の一環として実施しました。
大きな拍手とともに登場した高橋さん。モーツァルトの『ピアノソナタ イ長調 K.331《トルコ行進曲付》』でコンサートの幕が開きます。市内小学校で実施したクラスコンサートでは、「トルコ行進曲」で知られる第3楽章だけを抜粋しての演奏でしたが、本コンサートでは、緩やかに流れるような第1楽章、美しいメヌエットの第2楽章も披露しました。

高橋さんの優雅で力強い演奏に、会場からは大きな拍手が沸き起こりました。
高橋さんは前日までのクラスコンサートを思い起こし、
「『トルコ行進曲』を演奏した時に、クラスコンサートでの子どもたちの元気な手拍子が蘇ってきました」
と話しました。
高橋さんは、次に披露するショパンの楽曲についてのお話を始めました。
1800年代、ショパンが生きていた時代。母国であるポーランドは他国によって分割されていたという歴史に触れ、
「ショパンの楽曲には母国を想う気持ちが込められています。ショパンの楽曲が美しいだけではなく、心に感動をもたらすのはそのためです」
と話し、
『ノクターン第4番 へ長調 作品15-1』を演奏しました。

続けて演奏するのはショパン作曲のワルツ2曲、『ワルツ第9番 変イ長調 作品69-1《別れのワルツ》』と『ワルツ第10番 ロ短調 作品69-2』。
この2曲に共通しているのは、ポーランド起源の民族的な楽曲形式である「マズルカ」の要素が含まれているところであると、高橋さんは語ります。そこからもショパンの望郷の念を感じ取ることができます。
お客様はショパンがそれぞれの楽曲に込めた想いを感じながら、高橋さんの演奏に浸っているようでした。
後半はドビュッシーの楽曲です。
高橋さんは、「月系ラーメン」や「月山」、「月のホテル」など、庄内地方には「月」が名称に付くものが多いことに触れ、その流れで次の演奏曲、『月の光』を紹介しました。
続けて演奏するのは、『喜びの島』。フランスの画家、アントワーヌ・ヴァトーが描いた『シテール島への巡礼』という作品から着想を得て、バカンス先の島でドビュッシーが作曲したと言われているそうです。
高橋さんは、
「この楽曲は、まるで1本の映画のように、次から次へと色んな要素が出てきます」
と語ります。
コンサートは日中に行われましたが、『月の光』の演奏中は、会場がまるで柔らかな月光に照らされたような、ゆっくりとした時間が流れていました。
打って変わり、『喜びの島』は装飾音やリズムの変化といった技巧を駆使して、華やかな世界観が描かれます。どこかを冒険していたり、浜辺でくつろいでいたりなど、色んな場面が思い浮かぶような演奏に、会場中が魅了されていました。

アンケートでは、「クラシック音楽には関心が少なかったですが、間近で美しい演奏を聴いて感動しました」「生のピアノ演奏を聴くのは初めてでした。身近な施設でこんな貴重な体験ができるなんて思わなかった」という声が寄せられました。前日までのクラスコンサートで関心を持ち、今回のコンサートにも来てくれた児童もおり、「娘が小学校の演奏を聴いてもう一度聴きたいとのことだったので、本日は親子で来ました。大変素晴らしかったです」という感想が寄せられました。
高橋さんの情感豊かな音色に包まれた、とても素晴らしいコンサートとなりました。