活動レポート
高橋多佳子さんによるピアノ公開レッスン
ショパン国際ピアノ・コンクールの入賞歴を持つピアニスト・高橋多佳子さんを講師に迎え、受講生が大ホールのステージ上で直接ピアノの指導を受ける「高橋多佳子さんによるピアノ公開レッスン」を実施しました。
この他にも、高橋多佳子さんは今年度の希望ホールレジデントアーティストとして、酒田市に一定期間滞在し、今年6月に富士見小学校、泉小学校、若浜小学校、西荒瀬小学校へのクラスコンサートのほか、八幡タウンセンターでの地域コンサートに出演されました。
今回は、未来のピアニストたちが国内を代表するピアニストから直接レッスンを受けた本事業の様子をレポートします。
〇高橋多佳子さんによるピアノ公開レッスン
8月5日(金)の公開レッスンを受けたのは、県内外から応募があった9~16歳の6名です。
まずは受講生たちがそれぞれ選曲してきた曲を一度演奏しました。高橋さんも客席で演奏を聴き、その後ステージ上に用意された2台のピアノでそれぞれの楽曲についての指導が始まります。
レッスンでは、時折高橋さんが実際に弾いてお手本を見せながら、曲がつくられた背景、手の使い方、演奏する際に心がけるところ、和音の分析など様々な面から指導を進めていきました。


たとえばカール・フィリップ・エマニュエル・バッハ(ヨハン・セバスチャン・バッハの次男)の『アンナマグダレーナのためのクラヴィーア小曲集 マーチ』を弾いた難波彩羽さんには、「当時のチェンバロは今のピアノに比べて音の強弱があまり出せなかったこともあり、より表現の幅を出すような工夫がされているので、チェンバロを意識してみよう」というアドバイスがありました。
ショパンの『バラード第2番』を弾いた斎藤真由さんには、「この曲には激しい部分と牧歌的な部分があって、ショパンの生きてきた時代やポーランドの歴史を連想させるね。そういった背景に思いを馳せて弾いてみよう。」など、それぞれの曲の時代背景についても分かりやすく説明がありました。手の使い方については「はっきりと手の甲の骨を出すような手の形で」「鍵盤をつかむように」など、実際に手や腕の形を見せながら指導されました。また、そうした形を実現するための日々の練習の方法についても具体的にアドバイスがありました。
何人かの受講生に同様に伝えていたのは「曲の中で意外な和音や休符が出てきたときに、演奏する本人が驚きを感じて弾くことが大事。」ということです。高橋さんの言葉ひとつひとつによって見る見るうちに受講生の演奏が変化していきました。
全体を通して「今のフレーズの中で一番大事な音はどこだと思う?」「AとBどっちがきれいに聴こえるかな?」などを問いかけて、受講生の考えを引き出しながらレッスンをしていく様子が印象的でした。どの受講生も目を輝かせてレッスンに望んでいました。
〇演奏発表
8月7日(日)には5日のレッスンを受けた成果を大ホールで発表する演奏発表を行いました。6日(土)は一人ずつ大ホールと小ホールでの練習を行い、公開レッスンでの指導を受けて熱心に取り組んでいる様子でした。
演奏発表が始まる前、緊張した面持ちの受講生たちに高橋さんが優しく語りかけました。

「せっかくの機会だから楽しんで。とても素敵な音楽に携われる幸せを噛みしめて、思い切って弾いてね。
大丈夫だから!演奏するときは一人だけど、今日はみんなで一つのチームだからみんなの演奏を応援しよう!」
高橋さんが客席で見守る中、受講生一人ひとりの演奏が行われました。レッスンの内容を吸収して披露した演奏は、レッスンで初めに演奏したものとは全く異なるものでした。


演奏後、ステージ上に受講生と高橋さんが登壇し、高橋さんが受講生一人ひとりに向かって丁寧に講評をお話しました。それぞれの講評最後には高橋さんが「ピアノは今後も続けていきますか?」と問いかけ、「はい。続けます」と皆さんが力強い言葉で答えました。
高橋さんは最後に次のように受講生へのメッセージを送りました。
「音楽に携わっている幸せをぜひみんな持ち続けてほしい。
音楽で聴く人を幸せにできる、そんな音楽家になっていってほしいなと思います。
また皆さんに会えることをとっても楽しみにしています。
これから音楽だけに限らず色々な経験を積んで、いろんなことを頑張ってください。将来を楽しみにしています。」
受講生の一人で酒田市から参加した高橋美慧さんからは「とても緊張していましたが、レッスンを受けて『なるほど、こう考えるんだ!』と思い、楽しく受けることができました。特に、バッハの曲で『意外な音を意識する』ということを教えていただき、面白いなと感じてさらに楽しく弾くことができました。高橋先生の『音楽でみんなを幸せにできる』という言葉がとても印象に残っています。」と感想が寄せられました。
観覧されたお客様からは、「若々しい未来のピアニストの演奏が聴けて楽しかったです」「大変丁寧に細やかに指導なさっていて、とても参考になりました。体の使い方で音が変わっていくのが面白いほどでした」という声が聞かれました。
受講生たちは、他の受講生のレッスンや演奏を見て気づきを得たり、演奏前にお互いに励ましあったりと、高橋さんの言葉どおり一つのチームとして演奏発表のステージを作り上げた姿が印象的でした。
高橋さんから直接受けたレッスンと講評の暖かい言葉は、きっと受講生たちの今後の大きな原動力となるでしょう。

9月3日(土)には「生で聴く『のだめカンタービレ』の音楽会 ピアノ版」での演奏を控えている高橋さん。
映像と美しい演奏で大人気漫画「のだめカンタービレ」の世界が蘇るステージをぜひお楽しみください。