酒田市民会館 希望ホール KIBOU HALL

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活動レポート

高橋多佳子ピアノ・リサイタル庄内公演in酒田

希望ホール 大ホール

9月初旬に酒田市内の小学校4校でクラスコンサートを実施した高橋多佳子さんが、「高橋多佳子ピアノ・リサイタル庄内公演in酒田~新しき道 Neue Bahnen~」を開催しました。このプログラムは、昨年11月21日に東京文化会館で行われた高橋さんのデビュー30周年記念公演と同様のプログラムです。

大きな拍手とともに登場した高橋さん。『2つのノクターン  作品15』でコンサートの幕が開きます。『作品15 -1』では牧歌的な暖かい音色が 、『作品15-2』ではサロン音楽を思わせるような洗練された音楽が会場に響き渡りました。

高橋さんはご挨拶の後、続く『バラード第1番』について、

「ショパンが21歳から25歳くらいの間に、長い時間かけて書いた力作です。ポーランドからパリに出た頃に作曲されたもので、ピアノという楽器を使って憧れや嬉しさ、悲しみ、怒りなど、ありとあらゆる感情が表現されているように思います」

と話しました。

高橋さんの言葉どおりドラマティックな演奏に、会場からは大きな拍手が沸き起こりました。

続いては『4つのマズルカ 作品17』です。高橋さんはマズルカについて、

「ショパンが生涯に渡って書き続けた作品であり、全部で60曲以上もあります。ショパンにとってはまるで言葉そのもののような音楽であり、日記を書くようにポーランドを思い出しながら作ったのではないかと思います」

と説明しました。

次は『ポロネーズ 第6番 英雄』です。革命が起きた際、ショパンは自身も革命に参加するためポーランドへ戻ろうとしますが、戦いではなく音楽によって世界にポーランドという国を伝えてくれという友人の言葉に、革命には参加せず作曲を選びました。

「ポーランドという国を世界中の人に伝えようとして書いたように思える、そんな作品です」

と高橋さんは話します。

ショパンにとっての日記とも言えるマズルカと、世界に向けた熱いメッセージのこもったポロネーズ。お客様はそれぞれの作品に表現されるショパンの心に思いを馳せながら聴いているようでした。

後半は、シューマン『アラベスク』とブラームス『ピアノ・ソナタ第3番』です。

高橋さんは、本公演のタイトルでもある『新しき道』には2つの意味があると話します。1つ目はショパンをライフワークとしてきた高橋さんにとって、ブラームスの作品が新たな試みとなるということ、そして2つ目は、ブラームスが20歳の際の演奏を聴き、あまりの素晴らしさに驚嘆したシューマンが『新しき道』というタイトルでブラームスを世の中に紹介したことです。

最後はブラームスの『ピアノソナタ第3番』です。

この曲を通して使われるのは、ブラームスがクララ・シューマンの誕生日に贈った葉書の中で、「高き山、深き谷からあなたに誕生日のお祝いを千回伝えます」という言葉に添えて書かれた主題です。

「ブラームスの心にはクララへの思いがどんどん膨らんでいき、クララへの愛を語るようなロマンティックな作品を多く残しています」

と高橋さんは話しました。

まるで交響曲のように重厚な響きに会場中が包まれ、約40分間に及ぶ演奏の後には割れんばかりの拍手が起こりました。

アンケートでは、「柔らかく温かい演奏でした。心地よい時間でした」「コロナでなかなか外に出られない中、久しぶりのピアノコンサートを楽しませていただきました。やはり本物はいいですね」という声が見られました。前日のアナリーゼワークショップと合わせてご来場いただいたお客様も多く、「昨日のワークショップを聞いていたので、曲への理解がとても深まりました」という感想が寄せられました。

高橋さんの温かみのある音色に包まれた2時間となりました。

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